「選択と集中」に抱く違和感の原因

こんにちは。

売上と社員のやる気を一度に伸ばす事を支援する
ウィズスマイル降旗(ふるはた)です。

選択と集中。

戦略に関するこの言葉を
あなたも聞いた事があると思います。

今回は、
ある健康関連の商品を
開発・販売している社長さんとのお話をもとに、

選択と集中を通じて、
戦略に関する重要な点をあなたと共有します。

(動画再生時間:13分01秒)

(BGMには、音楽素材MusMusの楽曲を使用しています)

 

選択と集中の中身

この健康関連の商品を扱う会社では、
戦略を検討する会議を最近行い、
その中で”選択と集中”という話が、

役員や企画部長などの発言で
よく出るとのこと。

この戦略を検討する会議での議論は、

  • 既存の事業に主力商品が8種類あり、今までは4種類に特に注力、残りの4種にもそこそこ力を入れていた。

そこに選択と集中の考えから

  • 8商品からこれからは注力する商品を3商品に絞込み、そこに集中する。
  • 新商品については、今まで毎月3商品以上の発売をするために開発を進めてきたが、今後もこれを継続する。

という内容の話し合いが行われているそうです。

社長さんは会議での議論、発言を聞きながら、
どうしても違和感があるとおっしゃるのです。

この社長さんの違和感は、

既存商品は3品目に絞り込み、
選択と集中をしている。

新商品が必要なのは事実とはいえ、
今後も今まで通り
毎月3商品以上の発売を繰り返すので、

かなり手広く取り組む様に見えるという点です。

この様な考え方が、
本当に選択と集中としてまとまっているのだろうか

その様な観点で議論されて進んでいるだろうか、
という疑問があって、
違和感を抱いたとのことでした。

 

選択、集中の理由

あなたはこの内容を聞いて、
どう考えるでしょうか?

8種の商品を3種に絞るという意味では
選択と集中を行なっている状況。

将来を考えると新商品は必要だから、

今まで通り今後も
3種以上の新商品発売を目指し、
商品開発を行い、
そこに集中投資をしている様に見えます。

よって、経営戦略として、
選択と集中ができている
と考えるでしょうか?

順を追って考えてみましょう。

販売中の8商品から売上が上位の3商品に
絞り込むのだそうです。

この点から考えられる戦略上の課題は、

既存の売上の高い商品に集中するので、
売上額、当然そこには利益額があり、
それぞれの維持、あるいは
それ以上の向上、増大が必要だ

という点に課題があると考えることができます。

まず、この点を前提として
明確に押さえているかですが、

実際の議論では、
この部分を明確にして議論しているわけ
ではない様でした。

正直に言うと、
戦略上の課題がハッキリしない中で、

選択と集中という
戦略のテクニックを議論することは、
ミスる確率が高くなります。

次の観点は、
絞り込んだ商品数が3つの理由です。

売上の上位3商品を選んだ
とのことですが、

実際の売上額は、
2位と3位の売上額の差が、
かなり大きい状況です。

1位と2位の商品で
売上の大半をあげており、

3位の商品が占める比率は
高くない状況であり、

3位と4位の商品の売上額の差は
それほど大きいわけでもないとのこと。

あなたも気づかれた様に、
ここにおかしな点が2つ隠れています。

一つ目は、
売上額の維持、向上、
当然そこには利益額の維持向上がありますが、

その場合、売上の比較ではなく、
粗利額での順位付けで
議論するものです。

二つ目は、
絞る商品数を3にした理由が、
明確にはない点です。

区切りの良さで3つにしたと捉えても
仕方がない議論になっています。

 

ハッキリしない点

前提のズレとおかしな2つの点。

これが整理されると、
選択と集中の理屈が
おかしなことはハッキリします。

選択と集中について、
3つに絞ったなどの
結果を議論していますが、

重要なことは、
結果ではなく
選択と集中を行なった過程です。

もう少し説明をすると、

そもそも何を目的に
”選択と集中”をするのか

という点と

選択して絞り込む理論と
それに基づく基準がハッキリしない、
存在せずに検討している
という点です。

この点がハッキリせずに、

  • 8種類を3つの商品に絞る様にした、
  • 毎月3個の新商品発表には投資を続ける、

の様な結果を議論するので、
違和感を持つのも当然です。

”選択と集中”

とても耳心地のよい言葉ですが、
単に絞り込めば、
それで”選択と集中”ができた
という事ではありません。

 

戦略の変更

もう少し補足をすると、
どの様な経営戦略、事業戦略を
行おうとしているのか判らない点が、
違和感を増長しています。

今回、”選択と集中”を行い、
一応8商品から3商品に絞り込む検討をしました。

3商品にはお金と資源を集中し、
残りの商品には売上が落ちない程度に
お金と資源を投入することになるでしょう。

このことは、
お金を含めて、要員などの
経営資源の配分を
変えることを意味しています。

経営資源の配分を変えることは、
その背景に戦略を変更したという事象が
伴っています。

ここで一点、注意があります。

今回取り上げている選択と集中は
戦略そのものではありません。

戦略を実現する際の
考え方の一つに過ぎません。

戦略が変わるので、
それを実現する際に選択と集中の考え方を使う
というだけのことです。

この点は誤解しないでください。

この点は、戦略が何か
ということと深く関係しています。

戦略というと、
戦略と戦術の違いなどで
説明をされることが多いです。

一般的に言うと
大局的な観点から
目標を達成するための考え
などといろいろ説明されています。

戦略そのものの詳しい説明は、
多くの時間を必要とするので、
別の機会にしますが、

戦略を簡単に説明すると、
”経営や事業の目的、
ゴールを達成するために、
やる事を決める”ことです。

やることを決めることは同時に、
”やらない事を決める”ことです。

そして、
やることに対して経営資源を配分し、

やらないことからは
経営資源を剥がすことで、
経営資源の配布をし直すことが
戦略には含まれます。

戦略とは、
経営・事業の目的、
ゴールを実現するために、

やること、やらないことを
明らかにして、

限られた経営資源を
強弱をつけて配分し直すことです。

 

”選択と集中”の違和感

戦略が変わると、
経営資源の配分が変わります。

ということは、
先ほどのこの会社の
選択と集中の議論で
経営資源の配分は当然変わるので、

その背景では、
戦略は変わっているはずです。

先ほどの会社の場合、
”選択と集中”をやっていますが、

戦略の変更には全く触れていません。

”選択と集中”という
戦略の考え方をやっているけれど、

大元の戦略については
何も考えていない、
議論をしていない状況なので、

議論が進んだとしても、
違和感を抱かざるおえないのです。

選択と集中。

とても耳心地の良い
格好の良い言葉ですが、
これは考える枠組みでしかありません。

戦略が先にあります。

経営・事業の目的・ゴールを
どの様にして実現するのかを
まず戦略として考えることが必要です。

どこに注力するのか、
どこには力をかけないか、
を明らかにします。

今の状況から考えたときに、
この戦略を実現するために
経営資源の配分を行います。

この時に、選択と集中の考え方が
必要になることがある、
というだけの話です。

もし経営資源が潤沢ならば、
選択、集中は必要ないかもしれません。

選択と集中という
考え方を先行して用いるので、
おかしなことに
なってしまっています。

単なる考え方、
考える枠組みでしかないのに、

それ自身が
さも戦略として扱われている。

この様に、経営に関する話の多くに、
今回の選択と集中の様な
落とし穴が潜んでいます。

ですから。

基本を押さえておく必要があります。

そのために、
日頃から根本、基本、
それにつながる内容を
学んでおく必要があります。

 

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